森林学コースのページ

島根大学農林生産学科森林学コースのページです

日本林業はなぜ発展しないのか?

f:id:forestsu:20210805203213j:plain

 

日本林業はなぜ発展しないのでしょうか?

 最先端の技術が投入されたヨーロッパの林業は、環境に優しい素材やエネルギーを持続的に供給する成長産業です。なぜ日本の林業はヨーロッパのように発展できないのでしょうか?それは、日本林業の生産手段に技術革新が起こっていないからです。労働コストの高い先進国で林業を行うには機械化による生産コストの削減が不可欠ですが、これまで林野庁(国)の主導によって導入された高性能林業機械は、生産性の向上にはほとんど寄与しませんでした。日本の山で林業機械を効率よく使うには生産基盤となる林道が必要ですが、日本の山で作られている作業道という急勾配で幅の狭い道は生産性の向上を阻害しています。それなのに、日本では高性能林業機械と作業道が行政の補助金によって強力に後押しされているのが現実です。

 

どうすれば日本の林業は発展できるのでしょうか?

 日本林業の生産手段に技術革新を起こすことが必要ですが、これまで林野庁(国)が開発してきた林業機械の中で役に立ったものはほとんどありません。日本の林業現場に必要な技術革新を起こすためには、ヨーロッパと日本の林業技術をコンセプトレベルから比較することで、なぜ日本林業の生産性が低いのかを明らかにする必要があります。そこで、これまで研究活動を通じて日本の高性能林業機械、架線系集材、林道と作業道の問題点を明らかにして、技術的な解決方法を提示してきました。特に架線系集材では、ランニングスカイラインという日本を代表する索張りの問題を模型による力学実験(図1 )を通じて明らかにし、その改善方法を示すことに成功しています。

 

f:id:forestsu:20210805203258j:plain

図1  架線集材の模型実験

 

 林業は高度な知的産業

 日本林業の中に技術革新を起こすには、物理学、数学、統計学、機械工学、情報科学、経済学、経営学などあらゆる知識を総動員して課題に取り組む必要があります。これまでの日本林業の常識をリセットして、ゼロベースで考え抜くことが求められています。